「来人材ビジョン」に示された日本の厳しい現実を打破するには

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前回、経済産業省の「未来人材ビジョン」について触れました。
今年5月に発表されるや、SNS上では「日本はもう終わった」「政府が自らをダメ
出しした」などと話題になりました。

― 　危機感を感じさせる未来人材ビジョンの内容とは　―

雇用や人材に関する国際比較のデータ
・日本企業の従業員エンゲージメントは、世界全体でみて最低水準にある
　「現在の勤務先で働き続けたい」と考える人は少ない
　一方で、「転職や起業」の意向を持つ人も少ない
・企業は人に投資せず、個人も学ぼうとしない
・日本企業の経営者は、「生え抜き」が多く、同質性が高い
・生産年齢人口は、2050年には現在の2/3に減少する
・外国人労働者は、2030年には日本の至る所で不足する
・日本は、高度外国人から選ばれない国になっている
・日本の国際競争力は、この30年で１位から31位に落ちた

このような状況を変えていくために社会システム全体を見直す二つの方向性
「旧来の日本型雇用システムからの転換」
「好きなことに夢中になれる教育への転換」
とその具体策が示されています。
そのうえで未来を担う人材を育成するため、それぞれの産業や職種において雇用
と教育の制度の転換が必要だと提言しています。

―　日本の明るい未来のために企業は何をすればいいのか　―

いまの日本の状況が厳しいものであるのは、もう誰もが感じています。ただ、そ
の状況を打破する「雇用と教育の制度転換」には、何をすべきでしょう。
未来人材ビジョンは企業の「人的投資」の大切さを訴えていますが、企業の経営
側はどう考えているのでしょうか。
何人かの経営者の方に意見を聞いてみました。
美容チェーンの経営者様は
「今の若い人達に新しい技術を教えるために講習会をしても出たがらない。技術
を教えてもらうことよりも、自分の時間が取られることの方を嫌がる傾向にある
。学びの場を作るよりも、学ぼうとする意識や状況を作っていく方が先の気がし
ます。」
大手企業の人材育成の担当部長様は
「これまでの会社側がこれを教えたいという研修のやり方から、自分がやりたい
こと夢中になれることを見つけていくキャリア選択の制度を取り入れました。そ
してその実現のための社外学習や自己啓発などに支援をします。やらされてやる
仕事よりも、人は好きなことをするのが一番力を発揮しますから。」
結局は、本人が自ら目的意識を持って学ぼうとすることが一番大事だということ
ですね。

目指すものに向けて、何を実現すべきかを考えて努力する人間に育てる。
当然、今の学校教育においても「好きなことに夢中になれる教育への転換」が求
められるというわけです。画一的な詰め込み教育から、より柔軟な「知識」 と
「探究（”知恵”）力」の習得が必要となります。

その変革には教育機関だけでなく企業も主体的に参画すべきという意見もあり、
実際に産学連携による人材育成の場がスタートしています。
経済産業省は企業が高等教育機関において、自社の人材の育成や学生の教育等を
行う「共同講座」を設置する取り組みを支援しています。
共同講座運営費、人件費、委託・外注費、備品・機材導入費、その他で補助率は
1/2、上限3000万円。
１次公募では富士通株式会社×慶応義塾大学、株式会社ポピンズプロフェッショ
ナル×東京大学など15の共同講座への支援が決定しています。

もちろん今の雇用体制や教育制度を見直して、新しい人材を育成するのには長い
時間がかかることでしょう。
「今回の未来人材ビジョンは最初の出発点であり、 関係者の議論を喚起するた
めのものでもある。」と述べられている通り、政府として長期的な視点でこれか
らも検討していくとのことです。

とりあえず、今の日本の状況が世界的に見てどうであるかを、さまざまなデータ
で可視化してもらったことに価値があると思いました。
そしてその課題が明らかになったところで、私たちは解決に向けて再び学び努力
することができるのだと、強く信じています。

参考資料：　20220531001-1.pdf (meti.go.jp)

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