確定申告ってなに?
確定申告とは、「納税者が所有を(確定して)国に申告すること」です。1年間(1月1日~12月31日)の所得の合計額が所得控除の合計額を超える場合には、所得税の確定申告をしなければなりません。一般的に会社に勤めているサラリーマン、OLの方は会社側で「年末調整」などの処理をしているので、確定申告の必要がありませんが、在宅ワーカー・個人事業主のように個人で事業を行っている人は事業所得の申告が必要です。
●まずは税金のこと
日本の代表的な税金には、個人事業者や法人にかかる「事業税」と個人の所得に課せられる「所得税」があります。「所得税」は国税ですが、このほかにも住民税と呼ばれる「都道府県民税」や「市町村民税」といった地方税を負担することになります。例えば、1年間の個人の所得に課せられる税金は「所得税+住民税」ということになります。
●所得って何?
「所得」=「収入」ではありません。簡単にいうと、「所得」は「収入」から必要経費を差し引いた金額です。所得税や住民税などは、この「所得」をもとに算出されます。ですから必要経費が多ければ「所得」は低くなり、支払うべき税金も安くなるわけです。ただし、必要経費として認められるかどうかは、法律で基準が定められています。
●確定申告のために普段からしておくこと
確定申告するために、毎日何をしておけばいいでしょうか?
まず外出したときにはいつも、領収書あるいはレシートをもらう癖をつけましょう。明らかに仕事とは関係ない買い物も当然あるでしょうが、もらう癖をつけないと、後で「あっ、これは仕事のものだ」と思っても、もう後の祭りです。また、少額では会社名を書くのを面倒がる小売りのお店もたくさんありますが、金額だけの領収書でもとりあえずもらっておきましょう。
【Column】
OLでも
確定申告は必要?
サラリーマンやOLは基本的に確定申告の必要はありませんが、次の事項にあてはまる人は確定申告をしなければなりません。
・給与以外の所得が年収20万円を超えている人
・複数の会社から給与を受けている人の一部
・年収が2,000万円を超える人
会社に勤めながら、「在宅ワーク」を行っている人は注意しましょう。詳しくは、税務署にお尋ねください。
持ち歩くのに大きめの財布だと便利です。お金とレシートを一緒に入れるとごちゃごちゃしますし、ポケットが大きな財布なら交通費関係の領収書、事務関係の領収書などと、その場で分けることもできます。一日の終わりに、領収書を全部財布から出して、なにを買った費用かを隅にメモしておきます。こうしておけば、毎年の確定申告のとき、慌てふためくことはありません。でも、なかなかそうはいかないという人は、例えば電子手帳に簡単な表計算のソフトで「交通費はいくら」と入力するのはどうでしょう。そうすれば電車の中で経理の仕事ができてしまいます。
在宅ワーカーを目指す方はパソコンが好きな方が多いでしょうし、面倒な仕事でも好きなことの延長でやれば結構できるものです。ぜひモバイル経理屋さんになれるまで、頑張ってみてください。
【Column】
経理に便利な会計ソフト
確定申告の前に慌てないためには、毎日少しずつ経費と収入に分けて集計すればいいのですが、面倒臭がりの人には、経理をやってくれる会計ソフトを利用するのもいいでしょう。
法人向けですと、数十万もするような高いソフトも多いのですが、収益や費用を分析したりするツールが必要なければ、個人向けで数千~数万円単位で発売されています。
ある程度、扱いの慣れている人は、フリーソフトなどを利用しても面白いでしょう。
●マスターマネー(プラト)…毎日の収入や支出などを入力すると、未来のお金の動きまで予想してくれる、「お金の管理ソフト」
●てきぱき家計簿マム(テクニカルソフト)…日常の買い物の記録に便利なレシート入力機能など、家計簿をつける主婦のお助けソフト。自分の使いやすいようにカスタマイズ可能。
●エクセル(マイクロソフト)…経理はもちろん、請求書作成などいろいろな目的に使えます。自分でフォーマットを作れる人は、エクセルに挑戦しましょう。
●確定申告の手続き
確定申告は、あなたが住んでいる地域を所轄する税務署に、1月1日~12月31日の所得を翌年3月15日までに申告することです。収入額から経費を差し引いて所得を計算したり、各種控除額を計算して、所定の欄に書き込み、源泉徴収票(下図)を添付して提出します。
税務署には所得税の申告をしますが、「住民税」については、税務署からあなたの住んでいる市町村役場に連絡されるので、申告の必要はありません。
申告に必要な用紙は、過去に申告したことがある人には通常、税務署から郵送されてきます。申告したことがない場合は、税務署に取りに行かなければなりません。せっかく税務署に出向くのですから、わからないことがあればどんどん質問してください。
【源泉徴収票】
10万円の報酬で、1万円が源泉徴収されている例。9万円が実際に受け取る金額になります。
青色申告について知りたい(その1)
一般的に「青色申告」は収入の多い個人事業主向けで節税に有利です。経費が意外とかかる在宅ワーカー向けの申告方法ともいえます。青色申告の特典は40以上ありますが、ここでは、そのうちの主なメリットを紹介します。
●青色申告って何だろう
申告には「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告とは、青色申告の申請を行い毎日の取引を記帳し、その記帳に基づいて所得を計算し申告する制度のことです。この制度は税金の面でいろいろな特典が受けられます。青色申告の申請を行わない場合は、自動的に白色申告者の扱いとなります。
●メリット1 青色申告特別控除
青色申告者は10万~最高45万円の控除が認められ、次の要件を満たせば45万円の青色申告特別控除が認められます。
不動産所得・事業所得が生じる事業を営んでいて、これらの所得の金額に係る取引を正規の簿記(一般的に複式簿記)の原則により記帳していること。確定申告期間内に、記帳を基に作成した「貸借対照表」と「損益計算書」を確定申告書に添付して申告すること。
適用が受けられれば、所得から最高45万円を差し引くことができるのです。「複式簿記なんてできない」という青色申告者にも、10万円の青色申告控除が認められます。
白色申告と青色申告での税負担額を簡単に比較してみましょう(96ページ)
●メリット2 専従者特別控除
専従者特別控除とは、
(1) 青色申告者と生計を一にする配偶者や親族であること
(2) 収入を生じた年の12月31日で年齢が15歳以上であること
(3) 収入を生じた年を通じて6カ月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
これらの要件を満たす人(専従者)に支払った給与が経費として認められるのが専従者特別控除です。例えば、夫婦2人で飲食店を営んでいる場合、妻に支払った給料が経費として認められるということです。ただし従事の内容、従事の程度、使用人の給与の支給状況、その事業の規模や収益の状況などからみて、適正だと認められなければなりません。また、適用を受けるには届出書が必要です。
青色申告の場合は、専従者に支払った給料の額を必要経費とすることができますが、白色申告の場合は次の(1)か(2)のどちらか低い金額が控除額になります。
(1) 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
(2) この控除をする前の事業の所得金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額
●メリット3 純損失の繰り越しと繰り戻し
事業所得が赤字になった場合に、翌年以降3年間にわたって、損失額(赤字の額)を各年所得から差し引くことができます。また、赤字になった年の前年も青色申告していれば、前年分の所得から損失額を差し引き、所得税の還付を受けることもできます。
ここでは青色申告の主なメリットを3つ取り上げましたが、メリットは税金面だけではありません。青色申告を行うには、売り上げや仕入れ、必要経費を正確に出さなければなりませんので、この作業で経営状態がよく見えてきます。どんぶり勘定でこれくらいが経費かなあ、と思っていても実際にはより多くの経費がかかっている場合もあります。余計な出費も多いかもしれませんね。
また融資を受けたい場合、経営や財産の状況について資料の提出を求められるケースが多いので、そのようなときにも青色申告用の帳簿や決算書が役立ちます。メリットをフル活用して節税対策を立てましょう。
注)ここで使用している税率や控除額・特典概要などは税制改正などにより変更になる場合があります。詳しくお知りになりたいときは税務署へお問い合わせください。
【memo】
こんなに違う!
白色申告と青色申告の税負担額
まず所得額を計算します。
Aさんは年間123万円の収入があり、経費は39万円かかりました。
式1) ¥1,230,000(収入)-¥390,000(経費)=¥840,000(所得)
次に基礎控除38万円(税金を納めているすべての人が対象になる一律の控除額)を所得から差し引きます。※実際には基礎控除の他にも控除できる項目があります。
式2) ¥840,000(所得)-¥380,000(基礎控除)=¥460,000(所得)
ここから先、白色申告と青色申告とでは計算の仕方が違ってきます。
白色申告
課税対象金額は、(所得)-(基礎控除)なので、Aさんの場合は46万円です。この金額に対する課税率を10%とした場合、
¥460,000(所得)×0.1(税率)=¥46,000
4万6,000円が、納税額になります。
青色申告
・10万円の特別控除を受ける場合
式2)で求めた所得金額¥460,000から特別控除を差し引きます。
¥460,000(所得)-¥100,000(特別控除)=¥360,000
¥360,000(所得)×0.1(税率)=¥36,000
3万6000円が納税額になります。
・45万円の特別控除を受ける場合
式2)で求めた所得金額¥460,000から特別控除を差し引きます。
¥460,000(所得)-¥450,000(特別控除)=¥10,000
¥10,000(所得)×0.1(税率)=¥1,000
1,000円が納税額になります。
青色申告について知りたい(その2)
個人事業主が「青色申告」を活用するには、どんな手続きが必要でしょうか。ここでは手続きと経費や記帳について確認していきます。
●青色申告の手続き
新たに青色申告をする人は、適用を受けたい収入の生じる年の3月15日までに「青色申告承認申請書」をあなたの納税地を所轄する税務署に提出します。
その年の1月16日以降に新たに開業した人は、開業の日から2カ月以内に申請すればよいことになっています。新規開業のときは「青色申告承認申請書」だけでなく、「個人事業の開業等届出書」を開業の日から1カ月以内に忘れずに提出します。「青色申告承認申請書」を提出しても、必ず承認されるわけでなく、書類の不備などで却下される場合もあるようなので、注意しましょう。
一度申請すれば、税務署からの承認取消処分や個人事業主からの取りやめの申し出がない限り、事業を廃止するまで有効です。これで10万~最高45万円の青色申告控除の適用が受けられるのです。
●専従者控除を受けたいときの手続き
専従者控除を受けたい場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。提出は適用を受けたい収入の生じる年の3月15日までです。ただし、1月16日以降に新たな事業を開始した場合は、開始日から2カ月以内に提出します。「青色事業専従者給与に関する届出書」には、専従者の氏名や職務内容、給与額、支払日などを記載します。
●必要経費として認めてもらうには
自分の所得を正しく計算するためには、必要経費が大きなポイントです。必要経費は節税には欠かせません。日ごろからお金を支払ったときには、領収書を必ず受け取るようにしましょう。そして領収書を受け取ったときには、日付や使用理由、相手先などをまとめてメモしておくとよいですね。申告のときに領収書を税務署に提出する必要はありませんが、税務署の調査が来たときに、きちんと提示しなければなりません。長期にわたって保管しておくことが必要です。
自宅にオフィスを構える場合忘れがちですが、家賃や光熱費なども経費として認められる場合があります。例えば、住居と仕事場の床面積の割合が4対1であれば仕事分として4分の1を経費にすることができます。電話を共有していても同じことです。NTTから発信先のリストを取り寄せれば仕事用として使用した分がわかりますね。
●記帳の基礎知識
青色申告の場合は、資産・負債・資本に影響を与える取引はすべて記帳しなければなりません。青色申告者が申告時に提出しなければならない「貸借対照表」と「損益計算書」は、日々の取引が記帳された帳簿が基になり作成されます。すべての取引を「借方・貸方」に仕訳する「仕訳帳」と仕訳帳から勘定科目に振り分ける「総勘定元帳」のほかに「仕入帳」や「売上帳」といった必要帳簿への記帳が必要です。
主だった記帳内容を次に示します(カッコ内は帳簿名例です)。
(1)現金の出納について(現金出納帳)
(2)預金の預け入れ・引き出し(銀行預金出納帳)
(3)売掛金について(売掛帳)
(4)買掛金について(買掛帳)
(5)資産・減価償却について(固定資産台帳)
(6)売り上げなどの収入(売上帳)
(7)仕入れについて(仕入帳)
(8)経費について(経費帳)
まったく簿記の知識がない人でも独学で習得できますし、税務署に問い合わせながら進めることもできます。職業訓練校で実施している簿記コースを受講してもいいですし、もちろん会計士にお願いしてもいいわけです。どの方法が自分に向いているか、また時間的な問題や金銭的な問題などをよく考えて決めましょう。
注)ここで使用している控除額・特典概要・申請書名称・提出期限などは税制改正などにより変更になる場合があります。詳しくお知りになりたいときは税務署へお問い合わせください。
個人事業主になりたい
法人(株式会社や有限会社など)を設立せず事業を始めた場合は、「個人事業主」の届け出をしましょう。在宅ワーカーや翻訳業、プログラマー、コンサルタントなど「もの」を仕入れず主にサービスを提供して収入を得ている自由業、つまりフリーランスの人は「個人事業主」になります。
●どうしたら個人事業主になれるか
個人事業主になるには、開業手続きを行います。手続きといっても、開業時に納税地の税務署に「個人事業開業等届出書」を提出するだけです。ある程度定期的に収入を得ることができるようになってから、手続きを行ってもよいでしょう。「個人事業開業等届出書」には、事業所の所在地・屋号・事業の種類などを記載します。
●屋号とは?
開業届には「屋号」を記載します。屋号とは法人でいう「社名」にあたります。自由につけることができるので、自分の名前を含めたり、事業内容を含めた屋号にすることが多いようです。個人事業を始めるときにはじっくり考えて、印象がよく、覚えやすい屋号をつけましょう。
●個人事業のメリット
■開業手続きが簡単
個人事業は、開業届を提出すれば誰でもどこでも自由に開業することができ、手続き費用もかかりません。法人の場合は、設立手続きは法律の規制を受け、また設立費用も有限会社で約30万円と費用がかかりますし、資本金(有限会社300万円以上、株式会社1000万円以上)も必要です。
■決算時に作成する計算書の作成が簡単
個人事業の場合、税金の申告は簡易帳簿による記帳でかまいません。簡易帳簿とは、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳の5冊の帳簿を使用すればよく、記載方法も少し学べば誰でも簡単に作成できる帳簿です。決算時には「損益計算書」を提出するだけでいいのです。法人は複式簿記による帳簿が必要なので、簿記の知識が必要になり、決算時は「損益計算書」と「貸借対照表」を作成しなければなりません。
個人事業でも「青色申告」、つまり複式簿記による記帳を行うと、青色申告控除が受けられる特典があります。
●個人事業のデメリット
■一般に銀行からの融資や信用は法人のほうが得やすい
信用は個人が築き上げていくものですから、一概にはいえませんが、一般に個人事業より法人のほうが銀行や取引先からの信用を得やすいでしょう。個人事業が軌道に乗り、収入がある程度見こめるようになったら法人化を目指してもよいかもしれませんね。
■公私の区別がつきにくい
自宅以外に特に事務所や仕事場を持たない場合、家庭との区別がつきにくくなります。また出社・帰社の必要がないので、仕事があるときには作業が深夜にまで及ぶこともあります。自己管理・健康管理に充分注意しなければなりません。
●個人事業と法人どっちが得?
これも事業の内容や規模によりケースバイケースです。法人化するメリットは、例えば今まで個人事業主だった人が法人化した会社から給与を受け取るようになると、これは給与所得になるので給与所得控除が受けられます。会社側は支払った給与分は必要経費として計上できます。
事業規模が拡大したり、社会的信用を得たいときなど、必要に応じて法人化を考えていけばよいでしょう。