ビジネス文書の書き方
取引先などに宛てるビジネス文書にはマナーが必要です。まずは例文を基に、順を追って基本的な書き方を確認していきましょう。
●前づけって何?
【文書番号】【発信年月日】【受信者名】【発信者名】を「前づけ」と呼びます。言葉どおり、文書の前に必ず記載する事項です。
■文書番号
年度ごとに第1号からつけることが多く、同じ年度内には同じ文書番号はありません。文書番号をつけるのは文書を整理するためで、問い合わせをするときにも番号を伝えると便利です。例文(138ページ)では文書番号を記載しましたが、年賀状や挨拶文、社交文書には記入せず、見積もり書や請求書などに記載することが多いので、うまく使い分けましょう。
■発信年月日
基本的に、文書を発信した日を記載します。西暦でも和暦でもかまいませんが、一般的には西暦が多用されています。
■受信者名
会社名・役職名・氏名を正確に記載します。会社などの団体名には「御中」、多数に宛てる場合は「○○各位」や「ご一同様」といった敬称を用いるのが一般的です。
■発信者名
文書を発信する責任者名を記載します。個人であれば個人名でかまいません。所在地を記載してもよいでしょう。正式な文書は、ここに押印して発信します。
●表題・件名
例文では「メールアドレスおよびURL変更のお知らせ」となっている部分です。一目見て内容がわかるように「~の件」「~について」「~のお知らせ」といったように簡潔に記載します。
【memo】
前文の例
●「頭語」
拝啓
謹啓
前略(前文を略す場合)
拝復(通信の場合)
●「先方への挨拶」
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
貴店ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。
貴行ますますご発展のご様子何よりと存じ上げます。
●「感謝やお礼の挨拶」
平素は格別のご支援を頂き心から御礼申し上げます。v
この度はひとかたならぬお力添えを賜り深く御礼申し上げます。
日頃より多大のご愛顧をいただき厚く御礼申し上げます。
●「返信の挨拶」
貴信本日拝見致しました。
貴書確かに拝読致しました。
ご書面ありがたく拝読致しました。
●「お詫びの挨拶」
先日はなにかとお手数をおかけし深くお詫び申し上げます。
先般はいろいろとご面倒なことを申し上げ誠に恐縮に存じます。
平素はなにかとご面倒をおかけし心よりお詫び申し上げます。
※前略を使用し、前文を略す場合はすぐ主文に入りますが、「前略、取り急ぎ要件のみ申し上げます。」としてもよいでしょう。
文章は【前文】【主文】【末文】で構成されています。
■前文
前文は「頭語」「先方への挨拶」「感謝やお礼の挨拶」の順になります。
「頭語」とは、例文では「拝啓」のことです。一般的には「拝啓」を使用します。丁重な場合は「謹啓」、前文を略す場合には「前略」、返信の場合は「拝復」などを使い分けます。
「先方への挨拶」「感謝やお礼の挨拶」には、さまざまな書き方があります。いくつか例を挙げますので、適当なものをピックアップしておくとよいでしょう。また、返信やお詫びの挨拶も確認しておいてください(右ページ参照)。
■主文
さて、いよいよ主文に入るわけですが、「起こし」という言葉を使って、前文から主文に移り変わるようにします。
用件はあいまいな言葉を避け、的確な表現を使用して正確に内容を伝えましょう。「つきましては」「ところで」などの慣用句を使用して、要点を記載するようにします。
■末文
末文は、「結びの挨拶」「今後の愛顧を願う挨拶」「結語」の順になります。「結語」は、頭語と対応して使います。
「拝啓」「謹啓」「拝復」の結語は「敬具」、「前略」の結語は「草々」となります。
【memo】
主文の例
●「起こし」
さて、この度は
早速でございますが
すでにご承知のことと存じますが
末文の例
●「結びの挨拶」
まずはお願い申し上げます。
取り急ぎご依頼申し上げます。
取り急ぎお知らせ致します。
●「今後の愛顧を願う挨拶」
今後ともいっそうのご支援を賜りますようお願い申し上げます。
なにとぞ変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。
引き続きいっそうのお引き立て頂きますよう、お願いいたします。
●「結語」
敬具
草々(前略に対して使用)
●後づけの書き方
日付や数量・価格などを相手に印象づけたいときには、「記」として用件を箇条書きにするのが一般的です。
また、「追って書き」といって、「記」で箇条書きした後に、「追伸……」と補足してもかまいません。
「記」や「追伸」の後には、「以上」と締めくくります。
以上のように、ビジネス文書にはいくつかの決まりごとがあります。ビジネス文書は簡潔で正確に、そして効率よく作成するのがポイントです。効率よく作成するには、フォームをあらかじめ作成しておき、必要な部分を書き換えるようにするのがよいでしょう。ワープロソフトなどに付属しているフォームを活用するのもよいでしょうし、また、内容に応じた文書例が載っている書籍を参考にしてもいいですね。
2000/04/01
株式会社○○○ 営業部○○○○様
有限会社○○○ 山田花子
メールアドレスおよびURL変更のお知らせ
拝啓
平素は格別のご支援を頂き心から御礼申し上げます。
さて、この度、私どもの事務所のメールアドレスが変更になりましたので、お知らせいたします。新しいメールアドレスとURLは下記の通りです。
E-mail xxx@xxx.xxx.ne.jp
URL http://xxx.xxx.ne.jp
(旧 E-mail ○○○@○○○.○○○.ne.jp)
(旧 URL http://○○○.○○○.ne.jp)
引き続きいっそうのお引き立てを頂きますよう、お願いいたします。
敬具
ビジネスメールの書き方
在宅ワーカーの多くが、業務連絡などのやりとりに電子メールを活用していますが、顔の見えない相手とメールだけで仕事を進めていくのは、意外と難しいものです。いいたいことが充分伝わらないこともあるのではないでしょうか。しかし、充分なコミュニケーションがとれなければ仕事はうまくいきませんね。ここでは、スムーズに仕事を進めるためのビジネスメールのマナーや書き方などをお話しします。ポイントは次の3つです。
ポイント1 ビジネスメールのマナー……まずは基本的なメール設定について確認します。文字化けはしていませんか?
ポイント2 上手なメールの書き方1……こんなメールを書いていませんか? 相手にわかりにくいメールとは?
ポイント3 上手なメールの書き方2……さらに、相手にわかりやすいメールを書くことで、仕事をスムーズに進めていきましょう!
●ポイント1 ビジネスメールのマナー
まずは基本的なルールについて確認します。業務中に至急、読んでほしいメールを担当者に送っても、そのメールが文字化けしていたのでは、担当者が読めずに時間が無駄になってしまいますね。また、誰が出したのかわからないようなメールでは、担当者とのコミュニケーションがうまくとれません。スマートなビジネスメールを書くために、まずは基本的なことを押さえましょう。
■半角カナと機種依存文字
インターネットで使われる文字は、7ビットという単位のデータで送られてきます。通信ソフト(メーラー)やサーバもこれを前提に作られています。一方、半角カナが扱えるのは8ビットの[シフトJIS]のデータです。7ビットしか理解できないサーバに半角カナ交じりのメールを送ると文字化けしたり受信を拒否されたりするのはこのせいです。日本のパソコンは[シフトJIS]が主流ですが、ついつい使ってしまうことが多いようですので気をつけましょう。
また、機種依存文字、例えばウィンドウズで使用できる⑰、㈱などは、マッキントッシュでは読み取ることができません。相手のコンピュータ環境があなたの環境と違えば文字化けしたり、空白となって表示されてしまいますので注
意しましょう。
■HTMLメール
通信ソフトによっては、HTML文書形式でメールを作成できるものがあります。背景画像をつけたり、文字のフォントや色を設定できるので、カラフルなメールを作成できます。しかし、HTML文書形式でメールを作成しても、相手側の通信ソフトが対応していなければ、受け取った側は正常に表示することができません。タグがそのまま表示されたり、フォント指定した部分が文字化けしたり、背景画像は添付ファイルとして届いてしまう場合があります。
相手の通信ソフトを確認してから使用すればよいのですが、仕事で使う場合は、トラブルを避けるためにもHTML文書形式ではなくテキスト形式でメールを送るほうが無難です。
■改行位置について
おかしなところで改行が入っていて読みにくいメールを受け取ったことはありませんか。相手のメール環境が、あなたとは違うということを考えましょう。どのような環境でも見やすいように、アルファベットなどの半角文字で1行60~70文字(全角文字では30~35文字程度)で改行を入れるようにしましょう。また、1段落は7~8行を目安にし、段落を変えるときは空行を入れると、読みやすくなります。
横に長いメールを読むのは、あなたも受け取った人も面倒なものです。こんなところでも気遣いは大切ですね。
■署名について
ときどき名前の記載されていないメールを見かけますが、業務中の連絡、質問などのメールにフルネームが記載されていないと、受け取った側の対応が遅れることもあるので注意しましょう。
署名機能のある通信ソフトを使っているのなら、この機能を活用しましょう。仕事用と友達用に分けておくと便利です。仕事用には、あなたのフルネームとメールアドレス、必要であれば電話番号やファクス番号・住所を記載します。チームを組んで仕事をする場合、名前が記載されていないと、受け取った担当者はいったい誰が出したメールなのか見当がつきません。送信元のアドレスがあるじゃないか、と思われるかもしれませんが、メールアドレスだけで差出人を判断するのは至難の業です。パッと見ただけで誰が出したメールなのかわかるようにすることが大切です。署名機能がない場合は、面倒でもメールの最後
に、あなたのフルネームとアドレスだけは、きちんと記載するようにしましょう。
また、メールの書き出しに、
「いつもお世話になっております。△△業務担当の◇◇です」
のように、担当している業務と名前を記載しておくとよいでしょう。
■CCとBCCについて
通信ソフトには通常「TO」「CC」「BCC」のように、受取人指定の方法が3種類あります。送信先のアドレスを公開してもよいとき、公開したくないとき、と状況に合わせて使い分けていますか?
「CC」はカーボンコピーの略です。「TO」に指定した受取人以外にメールのコピーを送りたい場合に使用します。
「BCC」はブラインドカーボンコピーの略で、「CC」と同じように「TO」に指定した受取人以外にメールのコピーを送りたい場合に使用します。「CC」との違いは、受取人に「BCC」に入力したメールアドレスが表示されない点です。複数の相手にメールを送信するときに、「TO」や「CC」を使用すると、受け取った側は自分以外にどのアドレスに送られたのかがわかります。「BCC」を使用すれば、ほかの誰に送信されたかはわかりません。自分以外のアドレスは許可なく他人に知らせるものではありませんので、状況によって「CC」と「BCC」を使い分けましょう。
■送る前に読み返す
誰に送るメールであっても、必ず送信する前に読み返すようにしましょう。相手を傷つけたり怒らせる気持ちがなくても、書き方によっては思わぬ結果を招くことがあります。あなたに相手の顔が見えないのと同じように、相手もあなたの顔が見えません。相手の気持ちを文章からでしか判断できないわけです。通常、一度送ったメールを取り消すことはできないのですから、送信する前に必ず読む側の立場で読み返してみましょう。特にビジネスメールでは、よりよいコミュニケーションがとれなければ仕事はうまくいきません。信頼関係を築けるように、言い回しやマナーには注意しましょう。
●ポイント2 上手なメールの書き方1
業務中には、連絡メール(質問メールや問い合わせメール)を送ることが多くなります。どんな点に注意して書けば、スムーズに業務を行うことができるのでしょうか。ここでは、問題のある書き方の例を挙げてお話しします。
■問い合わせメールの書き方
業務中はマニュアルを読んでわからない点や、作業の問題点などを、業務担当者(リーダー)に問い合わせることが多くなります。問い合わせの方法によっては、何度もやりとりしなければ、回答が得られないこともあります。スムーズに作業を進めるためにも、要点をまとめて問い合わせる必要がありますね。
例えば、こんなメールがリーダーの元に届いたとします。
_______________________
送ってもらったファイルが読めません。鈴木
_______________________
メンバーの鈴木さんからのメールですが、どうやらこちらから送った圧縮ファイルが読めないようです。何か問題があったことはわかりますが、圧縮ファイルが読めない場合、
(1) 解凍ツールを持っていない
(2) 解凍ツールは持っているが、解凍方法がわからない
(3) 解凍しようとしたが、エラーメッセージが表示されてしまう
(4) 解凍はできたがファイルを開けない
(5) 解凍はでき、ファイルも開けたが、文字化けしていた
などのように、いろいろな状況が考えられます。鈴木さんのメールでは状況がさっぱりわかりませんね。この場合だと、リーダーはどのような状況なのかを質問するメールを送らなくてはなりません。これでは時間のロスです。
在宅業務では、隣の席にいる人にすぐに質問できるわけではありません。メールで問い合わせる場合、すぐに読んでもらえるとも限りませんから時間は貴重です。何がどういう状況でどこに問題があるのか、あなたの状況を明確に伝え、早めに対応してもらうことが必要です。
また、あなたにとって質問する相手は一人かもしれませんが、相手にとってあなたは数十名のなかの一人かもしれません。他の業務も同時に進行しているかもしれません。ですから、あなたがどの作業を担当している誰なのか、送られてきたファイル名はなんなのか、などの情報も伝える必要があります。
以上の点に注意して鈴木さんのメールを修正してみましょう(146ページの修正例参照)。
・どの業務を担当している誰なのか(名前はフルネームにする)
・何について質問するのか(ファイルについてなら受信日やファイル名を明記する)
・問題となっている部分を明確に記載する
・作業環境を書き添える
・署名をつける
これなら鈴木さんの状況がリーダーにうまく伝わりますね。
いつでも「相手にわかりやすい」メールを書くように心がけましょう。次のポイント3では問い合わせのメールのポイントをもう少しまとめてみます。
【鈴木さんのメールの修正例】
○○様へ
お世話になっております。後援会名簿入力担当の鈴木花子です。
○月○日に受信した「manual.lzh」ファイルについて質問いたします。
解凍は正常にできましたが、解凍後の「manual.lzh」の内容が文字化けしております。
※作業環境は「WIN8」・アーカイバは「ZIP」を使用しています。
――――――――――――――――――――
鈴木花子
123@abc.ne.jp
TEL/FAX 03-○○○○-○○○○
――――――――――――――――――――
●ポイント3 上手なメールの書き方2
業務中の連絡メール・問い合わせメールを書くときのポイントを押さえ、コミュニケーションをスムーズにして業務を進めましょう。
■質問は実例をあげる
例えば、データ入力業務で入力資料に記載されている電話番号の桁が少ない場合、
……………………………………………………………………………………………
電話番号でおかしなものがありますがそのまま入力してもいいですか
……………………………………………………………………………………………
ではなく、
……………………………………………………………………………………………
0123-4-123と記載されている資料があります。
桁が足りないようですが、このまま入力してもよろしいでしょうか
……………………………………………………………………………………………
このように、実例を挙げて質問するようにしましょう。実例を挙げにくいケースであれば、資料をファクスしたり、入力したデータファイルを送信してもよいですね。
■情報は正確に伝える
例えば、エラーメッセージが表示されることを伝えたいのであれば、全文まるごと伝えるようにします。ただ、「エラーが出ます」だけでは対応方法はわからないので、どの操作をすると、どういった内容のエラーメッセージが表示されるのかを正確に伝えます。
■作業環境を伝える
作業環境やアプリケーションソフトのバージョン情報なども伝えるようにしましょう。例えば圧縮ファイルのやりとりをするときは、受け取る相手の環境がウィンドウズかマッキントッシュかで、文字化けしたり解凍できなかったりします。圧縮ファイルを送るときは、送信側の環境(ウィンドウズかマッキントッシュか、など)と圧縮ツール名(Lhmelt、MacLHAなど)を記載しておくとよいですね。
■質問には必ず答える
あなたの質問に対して、または納品ファイルについて、担当者から質問があったときには、元メールの文章を上手に引用して返事を書きましょう。引用は必要なところだけを抜き取って、それに対してレス(レスポンス)をつけるようにしてもよいでしょう。
……………………………………………………………………………………………
>15行目の住所ですが「東京都新宿区新宿1」となっています。
>枝番のない住所ということでよろしいですか
……………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………
手元の資料を確認しました。
資料には「東京都新宿区新宿1」と記載されていますので
入力は資料どおりです。よろしくお願いいたします。
……………………………………………………………………………………………
このように、まず質問内容を引用して、資料を確認したこと、入力内容に相違ないことを、明確に伝えるようにします。
■用件をわかりやすくまとめる
複数の質問や連絡がある場合には、用件を箇条書きにすることをお勧めします。箇条書きで質問することで、相手も返信がしやすくなります。一般に業務担当者は、あなた以外のメンバーからも常にメールを受信していますので、一目でわかるように書き方を工夫しましょう。ただし、まったく話題が変わるとき(別業務の連絡など)には、面倒がらずにメールをいくつかに分けることも必要です。
■メールチェックを頻繁に行う
業務中はいつどんな連絡が入るかわかりませんので、少なくとも24時間に1回はメールチェックを行い、返信の必要があるものには速やかに返信するよう心がけましょう。数日にわたって不在にする場合は、事前に担当者にメールチェックができないことを伝えておきます。
「相手にわかりやすい」ということをポイントに、面倒でもきめ細かく、状況を明確に伝えるメールを書くことで、作業効率もUPしていきます。もちろん、質問の回答が理解できなかったり、解決できなかったときには、諦めずに何度でも質問を繰り返しましょう。
大切なのは、たとえ相手の顏が見えなくても、相手のことを考え、わかりやすいメールを出すことです。在宅であっても、人と人が関わり合って仕事することには変わりありません。コミュニケーション力もスキルのひとつと考えましょう。